2017年06月09日

「おかべ」

 「ふだん俳句や季語に関心の無い人に薦めたいエッセイ集である」という本の紹介で、
身近な生活の場面に溢れているという季語に出会いたくて、「季語、いただきます」という
本を買った。 読み進めていくうちに、「いのちの豆腐」というエッセイに目が止まった。

 豆腐は、漢の高祖の孫・劉安が作り出したといわれる。 日本には奈良時代、遣唐使に
よってもたらされたとされる。 白壁に似ているところから、女房詞で「おかべ」と言われる
とあった。 

 私にはこの「おかべ」に忘れられない思い出がある。

 母の実家は鹿児島県の片田舎で、私は毎年小学校の夏休みのほとんどを祖父母の家で
過ごしていた。 それは小学校1年生の頃だったろうか。 珍しく4歳下の妹と一緒に行った
時の事。 祖母が私達二人の訪問を喜んで「おかべどん、買うてこんなら」と言った。

 妹が小さな声で「姉ちゃん、おかべって何ね」と聞いた。まだ、今のように食べ物が豊富では
なかった時代、幼い妹は初めて聞く「おかべ」に期待したのだと思う。 私は「おかべ」が豆腐
のことだと知っていたが、妹は「豆腐」とわかって黙り込んでしまった。

 あれから半世紀近く経った今、鹿児島弁だと思っていた「おかべ」が、女房詞だったとは!
しかし、今度は「女房詞」がなんだか分かっているようで分からない。 本当に久しぶりに
「広辞苑」を取り出した。 それによると、「女房詞」は室町初期頃から宮中奉仕の女官が、
主に衣食住に関することについて用いた一種の隠語的な言葉だという。

 ふと、関心を持った「季語、いただきます」という本から、思いがけないことを学ぶことが
出来た。



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Posted by 熊本県高齢者介護施設・住宅ガイド at 14:22 │おしゃべり通信(KOGA)